ホテルの破産の仕方

文責:弁護士 上田佳孝

最終更新日:2020年06月20日

1 ホテルの経営会社の破産

 国が観光立国になることを目指し,各種政策を行っていたこともあり,ホテル業界は活気を帯びていましたが,ひとたび景気が悪くなってしまったり,感染症の問題で人の移動が減少してしまったりすると,ホテル業界は大打撃を受けることになります。
 場合によっては,破産を念頭に入れざるを得ないということもあるでしょう。
 ここでは,ホテルが破産するにはどうすればいいかという点についてご説明させていただきます。

2 破産するにも費用はかかる

 どうにか経営を立て直そうと努力しても,事業を閉じる以外に道がないという状況はあり得ます。
 その際にまず気を付けていただきたいのは,完全に手元のお金が無くなってしまってからでは破産が難しいということです。
法人の破産は,弁護士費用や裁判所に納める費用など,諸々合わせると百万円単位の費用がかかってきます(会社の規模等によってはさらに必要なこともあります)。
ですので,手元の資産が完全になくなってしまうと,そもそも破産手続を開始することすら非常に困難となってしまうのです。
 そこで,まずは資金に多少なりとも余力が残っている状態で弁護士に相談するという点を心がけてください。
 なお,破産以外の民事再生手続きや会社更生手続きを行う場合にも早期の相談が必須です。

3 破産の仕方

⑴ 申立ての準備

 破産の流れについてご説明します。
 破産の申立をするためには,まずその準備が必要になります。
 依頼した弁護士が案内してくれると思いますが,実際に資料を集めるのは依頼者自身でないとできません。
 書類はかなりの量になると思いますが,弁護士と打ち合わせの上,しっかりと準備しなければなりません。
 申立書等の準備は弁護士が行うことになります。

 

⑵ 申立て

 必要書類等の準備が整ったら破産申立を行います。
 申立を行うと,破産審尋が行われることが多いです。
 破産審尋とは,裁判官が破産者と面談して質問をする手続ですので,法人の代表者も裁判所に行く必要があります。
 破産審尋の後,特に問題がなければ破産手続開始決定となります。
 細かい流れについては裁判所によって異なる部分がありますので,申立代理人の弁護士に確認するとよいかと思います。

 

⑶ 破産管財人の選任

 破産手続開始決定後,破産管財人が選任されます。
 破産管財人は,会社の財産・負債の状況を調べ,財産を換価し,配当したりします。
 管財人の選任後,管財人に対して会社の財産や負債,帳簿などの資料をすべて引き渡します。
 管財人は,会社資産や負債の状況を調べ,代表者に不正行為がないかなどを調べます。
 その上で,会社代表者は管財人から様々な話を聞かれることになりますので,きちんと応じる必要があります。

 

⑷ 債権者集会

 その後,月に1回程度の頻度で債権者集会が開かれます。
 債権者集会では,管財人が現在の調査や換価の状況について債権者に報告します。
換価業務が終了すると,配当が行われます。

 

⑸ 手続の終了

 換価も配当も終了することで一連の破産手続きは終わります。
 法人は消滅し,会社の登記も閉鎖されることになります。

4 まとめ

 以上が,ホテル会社の大まかな破産の仕方となります。
 各会社によって状況は様々でしょうし,また,上述のとおり破産の流れは裁判所によって異なる部分もありますので,良く弁護士に確認することが大事です。

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